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俳優&プロデューサー「阿部進之介」インタビュー 「エンタメスポーツの可能性」

キングダム、るろうに剣心 最終章 The Final、ハリウッドドラマ「将軍(原題:Shōgun)」出演など世界で活躍される役者であり、山田孝之さんらと新しい才能の発掘&育成プロジェクト『MIRRORLIAR(ミラーライアー)』のプロデューサーでもある阿部進之介さんに、「映像業界から見るスポーツとイノベーション」をテーマにインタビュー

 

役者だけではなく、映画人として、映画界のイノベーションを仕掛ける

 

-  役者として海外に渡りご活躍中ですが、その一方でプロデューサーとしても爆進中の阿部さんに、今日はKIDSPORTのテーマに関して、プロデューサー目線やエンタメ軸でお伺いします。まずはなぜ役者だけはなく、プロジェクトのプロデューサー業に活動を広げたのでしょうか

 

阿部進之介(以下、阿)  

最初は映画仲間と「新しい才能を発掘したいね」って話から、山田孝之や仲間たちとで『MIRRORLIAR(ミラーライアー)』を始めました。
動いてみないと分からないことが沢山あって、試行錯誤しながらやってます(笑)

その結果、新しいことが生み出されたり、(映画)業界のイノベーションが出来たらなと。

 

 

  日本の今の映画業界って、役者もスタッフも、収入からしたら選ぶ人は少ないのが現状で。ハリウッドは勿論、世界的な常識と比べるとかなりかけ離れてると感じています。そういう話を昔から仲間としていて、自分たちで何かとっかかりとしてやれたらいいねっていうところから始めました。

 

-  かなり大きなテーマですね

 

  今は色んなことを試しているけど、『ミラーライアー』全体が実験段階でもあります。

新しい才能を生むだけじゃなくて、才能が生きる場所や作る人、そこに入りたいと思う人を増やすためにはお金も生まなきゃいけない。良い循環を作っていく為にはどうするかって、いや、大きなテーマですね(笑)

 

-  新しいかたちを作っているイメージでしょうか

 

  色んな側面があるんですが、テレビもそうですし、今、世の中にある以外で、活躍できる場所を増やせないかなって思っています。

チャンスの少なさがいい俳優を失っていきますし、育つ土壌がないから、それが層の薄さに繋がっているってところもあります。既存のものを変えるって難しいけど、自分たちで新しい場所なら作れるかもしれないなと。

 

-  派生したプロジェクト『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)』も始めて、ムロツヨシさん、水川あさみさん等、俳優の方が監督として作品を発表し、話題になりましたが

 

  そもそもフリーランスの人たちが自分のプロフィールやポートフォリオをアップできるプラットフォームとして『ミラーライアー』というものを作り、そこではフリーランスそはもちろん、事務所に所属している人も含めて多くの俳優に登録してもらう事ができたんですが、そこから派生したプロジェクトが『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)』なんです。
『すべての俳優に学びとチャンスを』というテーマで『ミラーライアー』を始めたんですが、俳優にとどまらず映画に携るクリエーターを発掘、育成していきたいという想いから、『じゃあ映画作りを通してそれを実現していこう』となり『ミラーライアーフィルムズ』が生まれた訳です。

さっきの話に通じることでもありますが、「お金も才能も生まれる、良い循環を作れる映画作り」をもっと具体的に挑戦していこうと、今はこのプロジェクトのプロデュースに力を注いでいますね。

 

-  ショートフィルムの作品からスタートされていますよね

 

  僕らは「誰でも映画を撮れる時代」をテーマに新しい才能の発掘を目指しているんですが、

そうなると2時間の長編映画は“誰でも”撮れるのか?ハードルは高くないのか?と想像したわけです。目的の入口として、ハードルの低さをまず考えたっていうのはあります。

 

-  映画というと一般的には2時間の方が人気であるイメージですが

 

  確かに今現在、ショートフィルムのマーケットは小さいですが、SNSもそうだけど、短い動画コンテンツは現代人には相性が良いはずだって思ってます。

映画をもっと身近なものに、手軽なものにしていきたいと思った時に、僕らが伝えていく先はその現代人だなと。映画離れをしているかもしれない層にショートフィルムでアプローチすることで、映画を楽しんでもらう。そうなると映画人の活躍する場所が増えることに繋がる。あとは配信サービスで考えた場合にも、相性はいいと思っていますね。

色々な側面はありますが、今はショートフィルムを通して「色んな場所で、短編を観られる、好きな時に」を目指しています。

 

 

 

リアルな人間がやってることの面白さ

映画業界も変革とデジタライズの時代。

 

-  映画業界も、配信マーケットが主流になり、大きな変革時にあると感じますが

 

  好きか嫌いかの問題でいくと、僕は映画館が好きですし、家で映画を見る時って自分で没入感を作らなきゃいけないんだけど、映画館てやっぱり映画の世界にスッと入れるんです。そういう場所っていう意味では映画館てすごく大切だし、作り手としては出来れば映画館で観てもらった方が嬉しいなぁって思うところはあります。僕の感覚的には、音楽で言えばレコードじゃないけど、映画館は絶対になくならないと思いますね。ただ形はかわるかもしれないですが。

-  大画面テレビの普及やインターネットの速さなどのインフラ普及も大きいのでは

 

  確かに便利にはなってますし、手軽に多くの作品に触れる機会は増えたんじゃないかなと。そういう意味では、そのインフラが整ってきたからこそ、『ミラーライアー』のプロジェクトが発信出来る時代になったってことだと思います。自分の役者としての経験値や仲間の立場などと一緒に、時代が整ったから出来るっていうか。

 

-  技術面で行くとデジタルの進化もすごいですよね

 

  そこで言うと、AIが演技できるようになるのかなぁ?って、興味あるんですよね(笑)。

この先、AIが演技をするって段階になった時点で、AIが感情も含めて人間のことが全て解析していなきゃいけないだろうし、それって可能なのか?と。

今、制作で言うとCGグラフィックも音楽も、技術的に格段に進歩しているし、そのスピードが近年はものすごく速い。技術の進化によって表現の幅は増えていますし、SFの様にAIの表現力がよりリアルな人間に近づいていますよね。

 

-  観てる側が、AI、人間、どちらの作品か判断できない時代に来るかもしれない

 

  リアルな人間がやることの面白さを見出せない限りは、僕らが作っているものは残らずAIに取って代わられると思っています。観てる方が、やっぱり人間が演技したもの、作ったものの方が面白い!ってならないと。

AIの進歩に僕らは身を任せるしかないとは思っていますし、どれだけ優秀なAIができても、それでも人間は人間が作るものに惹かれると思っています。

役者も制作も全てAIの作品を、人間の作品と比べて、観てる人の脳波の違いとか出ないんですかね?大学や専門機関で研究しているところがあったら、教えてもらいたいですね。

これは映画業界だけでなく、大きな話になってしまいますが、多分、人間がこれから人類として生きていく上で大事なところなんじゃないかなと。

 

-  面白いですね、スポーツ業界でもあり得そうなので、是非『ミラーライアー』のプロジェクトで実現してほしいです

 

  確かに!(笑)。いや、面白いかも。

いや、何かの記事かで見たんですが、zoomとかのオンライン打合せって、科学的には?脳的には?コミュニケーションがとれていないらしいんです。人間とコミュニケーションが取れているようで、画面を通すと脳的には単なる情報の交換にしかなってないという研究結果が出たそうです。zoomの画面を一枚の絵としてしか認識せず、実際に人と会って話す時と脳波の出方が全然違うそうで。そう言う違いが、人間の作品に比べて、AIの作品には表れるのかもしれないですよね。

 

-  VRやメタバースも考えると根本的に映画の作り方も変わってくるんじゃないでしょうか

 

  映画=コミュニケーションではないので、現状の概念で言うとメタバースに入ったらもう映画ではないと思います。手法からしても、今の映画作りは“完全なる客観から一枚の絵”を観るってことで構成されてるものだから、また違う次元の映画作りになると思いますね。

映画の中に入れたらどうなるんだろう?って考えるのは面白いですよね。でも、それは全く別のものになるんだろうなぁと思います。360度で映画を作ろうと思うと、体験型アトラクションに近いものになってくるかなと思うんですが、想像は膨らみますよね。

 

 

 

映像とスポーツ、同じエンタメで考える。

「競技の特性やルールが分からなくても、視覚的に面白い

 

-  メタバースやVRも、映像の話になるとスポーツとのマッチアップはこれから可能性が沢山出てくると思います

 

  それはすごくあると思います。さっきの体験型アトラクションの話も、スポーツになってくると“観る”だけじゃなく、自分も参加するっていうことが増えますよね。eスポーツも今はフィジカルを使う競技が増えてきてますよね。

その競技のことが分からなくても、映像に惹き込まれて観てしまうというか。

個人的にも何かで関わってみたいなとは思いますね。

 

-  映画とスポーツって、全く違う業界に思えるが、エンタメという観点では同じですよね

 

  新しい技術が加わってくると、スポーツをそのスポーツ以上に格好良く見せることが出来るかもしれないと思っていまして、競技の特性やルールが分からなくても、視覚的に面白くて熱中してしまうみたいな。そうなると、映像ありきで新しいスポーツ競技やプロジェクトが生まれそうですよね。

観るだけでも、新しい技術によってもっと楽しめる映像を作れると思います。単純に競技者の動きを客席で見るよりリアルに体感できるといったこととか。それが観るだけではなく擬似的に経験できるようになれば、自分では出来ないことを体験できる。

非日常で擬似体験できるという部分では、それこそ映画作りと似ているところもあると思います。可能性は無限にありますよね。

 

-  KIDSPORTでも、野球やサッカーなどの人気スポーツじゃない、いわゆるマイナースポーツに可能性を感じているし、その競技のアスリートのセカンドキャリアをもっと活躍させられる可能性があるんじゃないかと思ってまして

 

  『ミラーライアー』でもよく考えるんですが、シンプルに参加者(競技人口)を増やす=マーケットの拡大につながることは意識しています。増やすには大きく二つ手法があると思っていまして、一つは他の競技や競合になりそうなコンテンツよりも面白いプロジェクトを作るか、もしくは今のシェアだけではなく世界シェアなど新しい層にアプローチするのか。

やはりプロジェクトを発展させるにも継続させるにもお金は大事で、そうなると観てる人を含めた参加者が増えないとダメだと思っています。

例えば、フィギュアの選手だと競技だけではなく、エンタメコンテンツとしてショーもやってるわけで、オリンピックのような純粋な競技と違う角度からの面白さを伝えるコンテンツを作るのも一つの手法だと思いますね。その一つがビジネスになれば競技人口を増やすことにもなるだろうし、逆にスケートボードのようにエンタメから競技に発展することもあるんじゃないかなと思います。

 

-  『ミラーライアー』の主旨に近いところがあるかもしれないなと思っていて、何かでご一緒できたら面白いですよね

 

  メタバースとかVRだと、確かにスポーツと映像で色んなことにチャレンジできそうですが、今すぐってなると中々ハードルが高いですね(笑)

“今の映画の概念”で考えるとスポーツと融合させて何かやるっていうことは思いつかないですが、体験型になってくるとゲームに近い新しいコンテンツは生まれるかもしれませんね。

 

-  確かに、ゲームでも映画でも、それこそ漫画でもスポーツを舞台にしていることは多くありますし、その発展も全く違う次元になる可能性ありますね

 

  スポーツって、色んな側面あって、そこにはドラマもあるし、人間っぽい行動だなと思いますね。それこそAIはスポーツする日が来るかもしれないですよね(笑)
あ、シンプルに『ミラーライアーフィルムズ』で、スポーツをテーマにした企画をやるのは面白いかもしれないですね!それは人間ドラマかもしれないし、ドキュメンタリーかもしれないし、色んな監督がスポーツをテーマに映画を作るみたいな。ジャストアイディアですが、そこから何かの競技と組むみたいなことに広がるかもしれないですし。

 

-  そうきますか、予想外でしたが、確かにそういう側面からっていうのも面白いですね

 

 

 

「成功体験を積み重ねるにはスポーツってすごく良い」

親として、子どもにスポーツをさせたい。

 

-  阿部さん自身はスポーツはされていますか

 

  僕はスポーツしてこなかったので、若い時は今より身体が細かったです。でも役作りを通して身体を鍛える事が増えた事もあって大人になって身体を鍛え出したりすると身体を動かすことの大切さを身に染みて感じることが多いです。身体を動かすことで、メンタルにも作用するし、自信もつきますよね。

 

-  お子さんにスポーツをさせているとお伺いしました

 

  うちの子どもはまだ4歳で、今はまだ、この子に何が向いてるかわからないと思っているんですよね。なので、今はとにかく色んなことを経験してもらいたいなと。スキー合宿に参加したり、夏にはキャンプ合宿に行ったり、とにかく走ったり(笑)。そんな環境においたときに、子どもの能力の差ってガッと出てくるんですよね。うちの子はのんびり楽しくってタイプなんですが、スポーツを通して周りの子たちも見てると、個性がすごく出ていて面白いですよ。スポーツを皆んなでするっていう環境下で、色んなことが見えてくるんだなぁと思っています。

 

-  昨今、スポーツもそうですが、競争させる良し悪し論争ありますが

 

  息子の先生たちが大切なことを言ってくれていまして、まずは頑張ること、自分の中のベストを目指すことが大事だと。脚が速くても頑張ってなかったらダメだろうし、あとは仲間と一緒に頑張る。それは最後までビリの子も含めて頑張ってる仲間を応援する。協調生も踏まえての教育なんだろうなと思いますね。

 

-  親としては心配になりませんか

 

  僕もやっぱり小さな息子に厳しい経験をさせることは最初心配でしたね。競争って過剰になんか考えちゃうし、競争させてぶつかって怪我しちゃったりとか。本当にその歳から必要なのかな?って。でも、親の考えとは別に、子どもって自分の方がすごいとか、こっちの方がかっこいいとか、本能的に競うことって持ってると思っています。

大人になって社会に出たら少なからず競争することになるので、そこは無理して競争させないっていうのも良くないと思いますね。うちでよく話すんですが、『外は社会であって、家は守られた場所』だから、うちの中ではリラックスできる環境を作ろうって意識しています。

 

-  スポーツで得られる体験は子どもにとって多いですよね

 

  そうですね、成功体験を積み重ねるにも、スポーツってすごく良いものだなと思っていまして。何かひとつ越えたときに、やっぱり自信になるじゃないですか。

息子のスキー合宿の時に、先生が言ってたんですが、スキーは意外と簡単にみんな滑れるから成功体験を生みやすい。やればできるを感じやすく、次に繋げやすいらしいです。成功体験を自分の中で得ていくって、人生を形成していくのに大事なことだと思いますし、その辺りを健康的に身体を作りながらって考えるとスポーツは最適なんじゃないかなって思っていますね。

僕も子どもの頃にやっておきたかったなぁって思いますね。血流もよくなるし、脳にも刺激ありそうですしね。

 

-  スポーツ=体を動かす=遊びぐらいまで定義すると、まだまだ色んなジャンルから新しいことが生まれそうですね。

  自分の子どもには感情表現が豊かになって欲しいと思っていまして、ダンスを習わせてはどうかと

考えているんですが、スポーツの括りをどこまでとするかは置いておいて、子どもたちがやってみたい!って思う入口を作るっていうことが大事なんじゃないかなって思いますね。実際には楽しく体を動かして、本質的なことを知らないうちに習ってるみたいな。

 

-  感情=人間の持っているものと考えると、これからのデジタル社会において、より必要になってきそうですよね

  最近、慶應義塾大学(SFC)で、特別講師をやらせてもらっていて『表現力の正体』の研究に俳優として協力しているんです。そこけでは俳優の演技を通して感情やコミュニケーション研究しているのですが、

日本では特に、社会的には感情的になる=悪とされていることが、演技だったり俳優の世界だと感情が正義だったりするんですね。俳優は感情を表に出す事で表現を成立させているので。

そういうこともあって、感情の大切さってものを再認識していますし、役作りの仕方も深く考えることが増えたと思います。

 

-  感情表現の話になってくると、バレーのような演技とスポーツの関係性もありますよね

 

  演技軸で考えると、子どもに対して、アクション体験から入るスポーツっていうのもあるかもしれないですよね。

僕も小さい頃そうでしたが、子どもにとってアクションヒーローって憧れですし、なってみたい!って思うじゃないですか。ヒーロー遊びの延長に運動の要素を取り入れると良いかもしれないですよね。ヒーローじゃなくても、自分のなりたいキャラクターでも良いと思います。

徐々に演技や役作りを入れていき、感情表現を学べるようになるとか良いですよね。高学年になっていくと、中身をちゃんと分かっていくカリキュラムにしていくとか、その延長線上には演出や撮影があってみたいな。

それをうまく習い事の一つとして落とし込めたら面白いかもしれませんね。

 

 

<阿部進之介> プロフィール

 

 

阿部進之介 (俳優)

WEB / Instagram / twitter

 

PROFILE

1982年生まれ
2003年「ラヴァーズ・キス」で映画デビュー。
『デイアンドナイト』(2019)では企画・原案・主演を、『MIRRORLIAR FILMS Season2』(2022)では『point』の脚本・監督を努めるなど、MIRRORLIAR FILMS PROJECT立ち上げの一人として役者以外にも幅広く活動。

 

 
『第1回 ミラーライアーフィルムズ・フェスティバル』
短編映画に気軽に触れていただけるよう様々な上映形式を模索し、ホール上映、野外上映、カラオケ上映、展示上映を行うほか、特別企画では、『MIRRORLIAR FILMS』全シーズンのテーマ音楽を手がけるAsahi (内田朝陽)、tah (山田孝之)による音楽ユニット「quu」の呼び掛けのもとクラブイベントを開催し、多様な文化を交えた、楽しい映画祭を目指します。
 
<第1回 ミラーライアーフィルムズ・フェスティバル>
開催期間:2023年4月22日(土)〜5月14日(日)
 
渋谷会場:東京都渋谷区内 複数会場
全国会場:カラオケ店1800箇所 (JOYSOUND みるハコ×MLF導入店) 
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